シーザー・ミランさんのウェブサイト「シーザーズ・ウェイ」に掲載されたシーザーさんのコラムです。アメリカにおける野良犬や捨て犬の問題、そしてヨーロッパでの対応の違いなどについて書かれています。「おかしい事に対して声をあげる」という事は、日本でも参考に出来る事だと思います。是非ご一読ください〜☆ 〜Big Tree for Animals
我々の住む米国が、野良犬や捨てられた犬達にどんな非情な対応をしているのかを再確認させてくれたニュースが、今週私の耳に入ってきました、私はそれを読んで、心が潰される思いがしました。
ペンシルバニア州のハリスバーグにて、その管轄下にある警察官達に次の様な指令が入ってきました。その内容は野良犬や捨てられた犬を発見した場合、地元の保健所に犬達を連れて行く事ではなく(常に満杯のため)、警察官達はその犬を自分で飼うか、管轄外まで連れて捨てるか、その場でその犬を撃ち殺すという事でした。
私にとって、この「殺すか、自分で譲渡するか、他に捨てるか」は、全くもって信じられないポリシーです。私たちは世界でも有数な国(アメリカ合衆国)に住んでいるにも関わらず、これが私たちの犬達に対する対処方法でいいのでしょうか?あのガンジーは「国の偉大さ、道徳的発展は、その国における動物の扱い方で判る。」と言いました。もちろんこのポリシーに大反対したのは、私だけではありません。沢山の人達がハリスバーグ警察所の方針に対して反対運動を行いました。しかし、こうしてこのようなポリシーが表に出る事なく実行されている所があるのを私は知っています。
今年は新しい選挙の年です。候補者達によって、私たちの税金をどのように使うべきか議論されています。私に言わせれば、税金の使い道として最悪の事柄は、毎年この国では、4500万匹もの犬や猫達の殺処分に使われているという事です。現在の経済状況において、これだけの税金は人間や動物にとって、もっと有効な事に使うことが出来るのです。
今年の夏、私はスペインにて「El Líder de la Manada(パックのリーダー)」という番組を撮影しており、そのついでにドイツへいく機会があったのです。私はドイツという国が、動物に関してどれだけ正しい方法をとっているのかを知りとても感心しました。例えば、ペットの不妊・去勢手術は必須。ブリーダーの場合はライセンスを取得をしなければなりません。そして、ドイツには我々がアメリカで見る様な野良犬の問題はないそうです。彼らの税金は罪のない動物達を殺処分するために使われていないという事です。これらの問題が全てうまく対処されており、他の国でレスキューされた動物達を受け入れられる余裕があるという事です。信じられますか?
他にも私をとても感心させた事は、ヨーロッパでは年をとったり、怪我をした犬達を譲渡する人がとても多いという事です。例えば足の骨が折れた犬、私の犬「アーゴ」がその一匹です。私がアメリカのシェルターに見学に行った際、シェルターのスタッフからとても頻繁に聞いたのは、「この犬やあの犬は年をとっている、または身体的な問題がありすぎる為にきっと譲渡されないでしょう。」という声でした。ヨーロッパでは年老いた犬達も沢山譲渡されてゆきます。人々はその犬とあと数年、または数ヶ月しか一緒にいられないという事を心配している様子がまったくありませんでした。それよりも、彼らが一番気にしているのは、その動物に残された日々を少しでも楽しく過ごさせてあげる事ができるかどうか、という事でした。これが本当の意味の「慈善活動」ですよね。
この国のこれらの問題について、私はこれからも声をあげて行きたいと思います。そして皆さんもそうする事を願います。私たちは動物を愛する国であり、彼らが辛い目にあうのを見たい訳ではないと思います。ましては自分たちの税金で動物をそのような目に遭わせる事なんて、もってのほかだと思います。私たちはこれからも法律を作る人達にこれらの問題について声をあげていかなければなりません。そして不妊/去勢手術の必須化も現実化するようにし、何よりもこれらの教育が必要です。なぜ年老いた犬や猫を譲渡するのか、人間の社会で協調して生きてゆく方法を犬に教える知識などを人々に学んでもらう必要があります。ドイツでは、犬を色々な場所に連れてゆくのに、セラピー犬の証明書を必要としません。犬は飼い主にちゃんとついて行くし、オフリードでも大丈夫です。人々は自分の飼い犬が社会にうまくとけ込めるようにする為に何をすれば良いのかをちゃんと教育されており、その結果がきちんと彼らの生活に現われています。
マーチン・ルーサーキング牧師の誕生日であった今週、私は「人生の一番重要な質問は『他の人の為にあなたが何をしましたか?』という事です。」という彼の言葉をツイートしました。言葉を話す事のできない動物達にとって、我々は何ができるのか、という事を一緒に考えて欲しいと思います。たとえ小さな行動でも、我々の国の犬達にとったらとても大きい事かもしれない。ハリスバーグの「殺すか、自分で譲渡するか、他に捨てるか」のポリシーに対し、人々が立ち上がったお陰で、警察署のパトカーの修理センター内に、一時的な野良犬のシェルターが設けられました。野良犬達は、ハリスバーグの人達がその土地のヒューメイン・ソサエティ(動物愛護センター)と新しい契約をしている間、その仮設シェルターで安全に過ごす事が出来る様になりました。だから皆さんも声をあげて下さい。もしかしたらうまく行くかもしれないから。
シーザー・ミラン