【米国発】連載コラボ企画!第5回目:犬にとって理想のリーダーとは?

──麻穂:犬が求めている理想のリーダーは、「体力」「知力」「気力」をバランス良く兼ね備えています。それは彼らの野生時代からのDNAが、「群れを引っ張るリーダーの条件とは」という概念として彼らのシステムにしっかり組み込まれているからです。前回にもお話しましたが、散歩は犬の飼い主にとっては絶対の勤め。それも毎日規則正しく行わなければなりません。ですので、愛犬の健康管理はもちろんのこと、自分の健康管理もきちんと出来ていたいもの。また、リーダーはより多くの知識も必要になってきます。経験から学んだ知識を身につけ、いろんなアイデアも兼ね備え、情報もきちんと蓄えている。そして、そこから正しい判断ができる人物こそがパックを引率できるリーダーです。最後に、リーダーは、周りを引っ張れるオーラーをもっている。感情の浮き沈みが激しくなく、精神的にバランスが取れている。常に前向きな気持ちを持ち、みんなを引っ張っていこうという勇気に満ちた人物でいる必要があります。

たとえば、船が遭難し、無人島に漂着し、助けが来るまでみんなでそこで生き延びていかないといけないときに、どんな人物が信頼できますか?みんなはどんな人物についていくと思いますか?周りと協力できない一匹狼的な人は誰もついてこないでしょうし、また、感情の浮き沈みが激しくすぐにパニくるような人では誰も頼ってはこないでしょう。危機的な時にこそ冷静に行動でき、また、何がなんでも切り抜けるというポジティブなエネルギーをもって、経験と知識を生かし正しい判断を素早くできるような人物に残りの人たちはついていくのではないでしょうか?犬のパックが自分たちのリーダーに求めるのはそういう像です。人間と暮らすことになった犬にすれば家族から離れ、「無人島」のようなところにやってきて生活を始めていかなといけないわけですから、安心して暮らしていくには、必ず頼れるリーダーが必要なのです。

犬達は人間とうまく暮らしていくために、わたし達を一生懸命学ぼうとします。だからわたし達人間も「犬」をもっと知って、もっと良い関係を作っていきましょう。

わたしはよく、自分の理想の先生像・理想の親像を思い浮かべる時に、それが実は犬にとっても真のリーダー像なのではないだろうかと思うことがあります。パックメンバーが間違ったことをした時は即座に見極め、きちんと正してあげる。素晴らしいことをした際も即座に発見し、それを褒める。そして常に公平で一貫性がなければいけないと思います。昨日「白」と言ったことを、今日「黒」というようでは、ついていくものを惑わし、信頼や尊敬を勝ち取れません。

ユーモアに溢れているということもリーダーにとっては大切な要素なのではないかと思います。リーダーだからと言っていつも厳しい面だけを見せなくてはいけないことはないはず。ユーモアでグループを和ませられるような気持ちの余裕は、リーダーだからこそ大切だと思います。

「突発的な危機」はチャンス!

さて、ではどうしたらそんなリーダー像を築いていけるのだろう?という疑問にぶつかりますが、毎日毎日の小さなことから、そして、「突発的な危機」をも利用すればいいのです。たとえば、毎日食事をきちんと決まった時間に与える、散歩も決まった時間にきちんと連れていく。トイレをしたがっている愛犬のサインをちゃんととキャッチし、速やかに行動する。具合が悪そうな時はすぐに対処してあげるなど、そういう些細そうで、必要な日常の行動をリーダーが提供するというだけで、リーダーシップの基礎(信頼)は築けるのです。

それから、「突発的な危機」といいましたが、たとえば、愛犬が他の犬が苦手だとします。いつも他の犬とすれ違う際にはけたたましく吠え、みんな迷惑そう。自分もおろおろ、いらいら。そんな時の愛犬も決してよい精神状態ではありません。すなわち、誰もハッピーな状態ではないわけですよね。また、「起こりえる場面」を先に想定し、まだ愛犬が「その態勢」に入る前から、そわそわしたり、逃げ腰な姿勢では、愛犬はそこから発する弱いエネルギーを感じ、信頼を得られません。次に同じような機会があったとき、先に状況を察知し、冷静にその場を切り抜けられるような行動を取ると愛犬は「あれ?すごい!」と見直してくれるわけです。いままでリーダーであるはずのリーダーが本来の任務を遂行できていなかったのに、それがきちんとできるようになったとき、愛犬はリーダーの存在を再確認し、信頼・尊敬の念を育んでくれるのです。ですから、「危機はチャンス」と受け止めて、そこから絶対に逃げずに前向きに、冷静に立ち向かいその場を解決させる。そうすれば愛犬から信頼と尊敬を示してもらえるようになり、リーダーとフォロワーの関係設立につながっていきます。

これはあくまで「理想像」。理想は高く持ち、少しずつ近づいていけばよいと思います。足りない部分は他でカバーし、工夫を凝らすのもリーダーの才量。

ただ、気をつけないといけないのは自分はリーダーなんだからと言って、どんな時でも「権力の行使」を振るい過ぎ、厳しくばかりするのがいいと言うわけではありません。特に愛犬がセンシティブで感受性の強い犬なら萎縮してしまい、余計殻に閉じこもったりして正しいリーダー/フォロワーの関係が作れない可能性が出てきます。また反対に、アルファな愛犬にのんきに自由にやらせていると、たちまちリーダーの地位を奪われてしまうことになります。臨機応変というのもリーダーの条件の大切な要素ですので、犬の個性に応じて、エネルギーの使い方をマスターする必要があります。

こう見ていくと、「うわぁ大変・・・」と思われるかもしれませんが、これがパック・アニマル(群れをなす動物)と暮らす醍醐味です。犬は必ず意味があってその飼い主のもとにやってくるといわれているので、愛犬にあったリーダーシップをマスターするのも自分の人生勉強と楽しんで理想のリーダー育成に励んでください。

確かにここで書いてることは厳しいですし、「そんな・・・」と引く方もいるでしょう。現にわたし自身もここで謳ってるようなレベルからかけ離れていて、まだまだ毎日が勉強ですが、これはあくまで「理想像」。理想は高く持ち、少しずつ近づいていけばよいと思います。足りない部分は他でカバーし、工夫を凝らすのもリーダーの才量。

犬の目線で──

この連載のテーマは「犬を知る!」。「人間の目」からではなく、「犬の目」から犬を語り、より多くの人々にもっともっと犬を理解してもらいたいという意図があるのです。人間が犬を知らないのに知ってるつもりで可哀相な思いをする犬をたくさん見てきています。人間の独りよがりや、自己満足で犬と暮らす例が一杯あります。極端な例で言うと、「Hoarders(ホーダーズ、動物屋敷:自分がお世話できる能力を遥かに超えた数の動物を飼ってしまうこと。)」がそうですよね。彼らは自分たち(人間)の尺度から「何が何でも動物の命を救う。それは素晴らしく尊いこと」という概念が大きく飛躍してしまい、命さえ救っていれれば素晴らしいという現実逃避な結論に達し、動物の本当の幸せが量れないようになってしまうのです。

犬を愛するからこそ犬の目で犬を理解し、犬と共存できるようになりたいですよね。そうするには、私が先ほど述べた様な厳しさも大切になってくると思います。「わたしには無理?」「だめなリーダー?」と思ってもいいと思います。それが問題解決の第一歩。問題に気がつくということが大切です。なぜなら、それは次に繋がるからです。

犬ってほんとうに素晴らしい生き物ですよね。そして彼らはわたしたちとうまく暮らしていくために、わたしたち人間を一生懸命学ぼうとします。だからわたし人間も「犬」をもっと知って、もっと良い関係を作っていきましょう。それがわたしたちの大好きな犬への恩返しだと思います。

──Big Tree:麻穂さん、今回も沢山の知識をありがとうございました。私がすごいなー!と感動する麻穂さんは、太陽のような明るい性格と、その行動力&実行力です。そのきらきらのパワーと前向きなエネルギーは、麻穂さんの周りにいる犬達にとてもよい影響を与えているんだろうなーと思います。ですから7月に虹の橋に渡った麻穂さんの愛犬ジュリエットさんの犬生は本当に満たされ、幸せなものだったんだろうなぁと思えるのです。

このように動物と人間の共存を目指すサイトを管理している私ですが、実は本当に何かと心配性な性格で、自分の愛犬達のリーダーになかなかなれないでいます。リーダーとは何か?頭では分かっているつもりでも、心がなかなかついてきてくれない歯がゆさ。でもこんな風に感じるのは私だけではないと思います。当サイトでは「犬の事を愛しているのならこれを100%出来ないと愛してる事にならない。」などという気持ちはありません。それは、もし私が完璧なリーダーになれたとしても変わる事のない気持ちだと思います。なぜなら、犬(そして動物全般)がこの世に存在する理由は、もっともっと深いものだと思うからです。犬からリーダーになる事を学ぶ事、そしてなかなかリーダーになれなくて日々葛藤する、そして試行錯誤する—それも人生の学びだと思うからです。

ただ、誤解してほしくないのは、「犬は許してくれるから、それでいい。努力も必要ない。」と思うのは大きな間違いであり、自分自身を含めて、それを言い訳にしてはいけないという事です。この日々の学び、喜びやそれなりの葛藤も、私たちが犬と一緒に共有し、共に成長してゆく事が、犬という素晴らしいベストフレンドを与えてもらった本当の理由ではないかと思うのです。しかし、同時に私たちが愛犬にとって安心を与えてやれる様な「リーダー」になる事は、犬にとって幸せな事の1つである事は間違いなく、そのゴールを目指して日々努力する=自分向上するきっかけをくれる犬達に感謝を忘れないでおきたいなと思います。

また、ドッグトレーニング、リハビリテーションには色々な方法があります。「ドッグトレーニングはこの方法がいい、その方法は古い!」よく耳にする言葉ですが、その犬の状況、タイプ、性質、その犬の飼い主さんのタイプなどにあった方法をとるのが一番だと思います。色々なタイプのドッグトレーナーさんがいらっしゃいますので、自分と自分の犬にあった人を探してあげて下さい。犬は私たちが考えている以上に尊いピュア(純粋)な存在です。(*犬だけではなく、動物全般)ですから、自称「ダメ飼い主」の皆さん、どうかあきらめないで、明るいリーダーである麻穂さんのアドバイスを心に刻んで、日々学んでいきませんか?私も一緒に頑張りま〜す。

寺口麻穂さんと愛犬のジュリエットちゃん

寺口麻穂

ドギープロジェクト、オーナー、米国ニュージャージー州のシェルターボランティア、アダプション・カウンセラーなど犬のしつけ・訓練に関するスキル、犬とのコミュニケーション法、犬の心理学などの知識を備え、長年の経験を積んだ犬のスペシャリスト。アメリカで発行されている日本人向けの情報誌、U.S. FrontLineにて「ドギーパラダイス!」というコラムも連載中。 URL: www.doggieproject.com ブログ:犬のこころ」 Blog (English): Doggie Paradise! Facebook:ドギーパラダイス!

プロフィール:

1988年に大阪を出て、「英語」と「世界」を学ぶためサンフランシスコ・ベイ・エリアに上陸。大学・大学院で文化人類学を研究した後、1999年に愛車で大陸横断し、東海岸に移住。2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件をきっかけに「子供の頃からの夢を現実に!」と犬のプロになる決意をし、人間の専門家から犬の専門家にキャリアチェンジ。地元のアニマル・シェルターでボランティアをしながら、個人でビジネスも立ち上げ、犬と飼い主がより充実した生活を送れるようその指導に日々励んでいる。11年前にシェルターから酷い虐待を受け捨てられたジュリエットという女の子のピットブルをアダプトする。この11年間、「運命共同体」としてお互いなくてはならない存在になる。2011年7月25日、沢山愛されたジュリエットは推定13歳で虹の橋へ。2012年2月シェルターにて生後5ヶ月のピットブルテリア、ノア(♂)を譲渡し、共同生活を始める。

【免責】

こちらに記載しているアドバイスはあくまでも一般的状況においての事柄です。各家庭における犬の問題行動にはそれぞれの環境や状況などが関係してきますので、寺口麻穂及びBig Tree for Animalsはそれらのひとつひとつにお答えする事はできません。又両者はこれらの記事の閲覧によって生じたいかなる損害にも責任を負いかねます。飼っている犬の問題行動への解決にはプロのトレーナーさんにかかる事をおすすめします。

 このコラムはリンクフリーです

沢山の方に読んで頂きたいので、皆さんのブログやサイトでどんどん紹介して頂けると嬉しいです!内容が間違って伝わるのを防ぐために「文章の転載」は現時点ではお断りしています。皆さんに使って頂けるよう、バナーを用意しておりますので、お好きなサイズをお使いください。「犬を知る!」のコラムへの直接のリンクは「https://bigtreeforanimals.org/category/column/know-the-dog/」です。当サーバーへの負担を避けるため、画像はダウンロードし、そちらのサーバーにアップロードした上で下のコードを使い、「ここに画像へのパスを入れて下さい。」の部分に画像パスを入れてお使いください。画像の上でマウスを右クリックすると保存できます。ご協力ありがとうございます!

▼大きいサイズのバナー

<a href="https://bigtreeforanimals.org/category/column/know-the-dog/"><img src="ここに画像へのパスを入れて下さい。" width="185" height="147" alt="連載コラボ:犬を知る!ドッグ・スペシャリスト 寺口麻穂 & Big Tree for Animals" /></a>

▼小さいサイズのバナー

<a href="https://bigtreeforanimals.org/category/column/know-the-dog/"><img src="ここに画像へのパスを入れて下さい。" width="185" height="100" alt="連載コラボ:犬を知る!ドッグ・スペシャリスト 寺口麻穂 & Big Tree for Animals" /></a>

この記事はリンクフリーですが、Big Tree for Animalsの許可なしに、このサイトに掲載の記事など、すべてのコンテンツの複写・転載をするのはご遠慮ください m(_ _)m