アメリカの動物保護施設の現状、課題、そしてコロナ禍後の影響

シェルターの犬

目次

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アメリカの動物保護施設は、毎年何百万もの動物を受け入れ、飼い主のいないペットたちに新しい家を見つけるために尽力しています。しかし、その現状は簡単ではありません。収容能力の限界、資金不足、虐待や放棄の再発防止など、さまざまな課題に直面しています。さらに、近年のコロナ禍が追い打ちをかけ、施設運営を一層困難なものとしました。

現状と課題

アメリカ全土に点在する動物保護施設は、迷子、放棄、虐待された動物を受け入れ、彼らにとっての安全な避難所を提供しています。これまでの努力(避妊・去勢手術の増加や啓発活動)により、2016年から2020年にかけて、動物保護施設の収容数は減少していました。しかし、毎年持ち込まれる動物の数はまだ多く、全てが新しい家を見つけられるわけではありません。

1,373の米国内の施設を調査した研究によると、この期間中(2016年から2020年)に動物全体の収容数は23%減少しました。避妊・去勢プログラムがこの減少に寄与しており、調査によれば、避妊去勢された動物の割合が増えることで施設内の動物数を減らす助けになっています。

しかし、2023年の最新データは異なる傾向を示しています。Shelter Animals Countの報告によると、犬の収容数は実際に増加しており、前年より約4%増加しています。特に犬に関しては、収容数が引き取り数を上回り、施設が過密状態になる原因となっています。2023年第3四半期のデータでは、犬の収容数が2.5%、全体の収容数が2021年に比べて10%増加したことが明らかになっています。

猫の状況は若干好ましく、昨年より収容数が約1%減少していますが、全体としては挑戦的な状況が続いています。避妊・去勢の取り組みが人口管理に重要な役割を果たしている一方で、特に犬については現在の保護施設の状況は依然として困難なままです。

2匹の子猫達

特に多くの施設が抱える共通の課題として、資金不足が挙げられます。これにより、十分な医療ケアやスタッフの確保が難しくなり、動物たちへの適切なケアが妨げられることがあります。また、施設の収容能力を超える動物の受け入れが常態化しており、動物たちの生活環境や健康状態への影響が懸念されています。

コロナ禍がもたらした影響

COVID-19のパンデミックは動物保護施設にも深刻な影響を与えました。感染拡大を防ぐため、施設は営業時間を短縮し、対面での譲渡イベントを中止せざるを得ませんでした。この結果、譲渡数が減少し、施設にとどまる動物が増える一方で、寄付額も減少しました。

さらに、経済的困難に直面した多くの家庭がペットの飼育を断念せざるを得なくなり、新たな持ち込みが急増しました。一方で、新しい家を探すことが難しくなり、施設は過密状態に拍車がかかりました。このような状況下、多くの施設は限られた資源の中で最善を尽くし、動物たちに少しでも快適な環境を提供しようと奮闘しています。

コロナ禍後の厳しい現状

パンデミックが収束しつつある今も、動物保護施設は数々の困難に直面しています。一時的に増加した寄付や助成金が長期的な解決策にはつながらず、財政的な苦境は依然として続いています。また、パンデミック中に迎えたペットを手放す家庭が増えており、施設の収容能力は引き続き逼迫しています。

ケンネルの中の犬

啓発活動や教育プログラムも再開に時間がかかり、市民の動物福祉への関心や理解が低下する懸念もあります。スタッフやボランティアの不足も深刻で、施設運営には多大な努力が必要です。

私たちができることとは?

アメリカの動物保護施設は、動物たちの安全と幸福を守るために欠かせない存在ですが、その運営は簡単ではありません。コロナ禍による影響、財政的な困難、過密状態などの課題を解決するには、私たち一人ひとりの支援が不可欠です。日本の保健所、シェルター、愛護団体なども同等だと言えます。

寄付や物資提供、ボランティアとしての参加、またはシェルターから動物を引き取ることで、苦境に立たされている動物保護施設に希望を与えることができます。さらに、SNSで施設の情報を広める、啓発活動を支援するなど、小さな行動が大きな変化を生む可能性があります。

同じ地球に住む仲間として、私たちが手を差し伸べることで、多くの動物たちに明るい未来を届けることができます。ぜひ一緒に、彼らのためのより良い世界を築いていきましょう。

日本の動物達のために私たちにできること

日本の保健所、シェルター、愛護団体をサポートできる活動リスト

1. 地元の保護施設や動物救護団体に寄付する

財政的な支援は、医療費や食料費、避妊去勢プログラムなど、保護施設の運営に直接役立ちます。小さな金額でも多くの人が継続して寄付すれば、大きなサポートになります。

2. 物資や必要品を提供する

ペットフード、毛布、ペット用おもちゃ、清掃用品など、保護施設が常に不足している物資を寄付することで、動物たちの暮らしを少しでも快適にすることができます。愛護団体さんの多くはアマゾンのウィッシュリストなどを作っておられ、気軽に物資を送ることができます。

3. ボランティア活動に参加する

動物の世話や清掃、譲渡イベントでのサポートなど、現場での直接的な手助けは非常に貴重です。

4. 避妊・去勢プログラムを推進する

自身のペットに避妊去勢手術を施すだけでなく、その重要性を広めることで、保護施設に持ち込まれる動物の数を減らす助けになります。身体的な理由で避妊・去勢ができない人、またその他の理由で避妊・去勢はしないと決めている方は、自分の犬が妊娠しないように最善の注意を図りましょう。自分の犬猫の子供が見たいと思う気持ちは分かりますが、シェルターや保健所にたくさんの犬猫が収容されている現在、そういった欲求は考え直す必要があるのではないかと思います。

5. 里親になる、または一時預かりボランティアを行う

保護施設に空きがない場合、動物を一時的に引き取る「一時預かりボランティア」になることで、施設に収容スペースを確保し、より多くの動物が助かるようにできます。「一時預かりボランティア」を確保できないと、保健所から犬や猫を引き出せないという愛護団体さんもおられるので、ぜひ一度ご検討ください。「フォスター(一時預かり)の大切さ・素晴らしさ:パート1」&「フォスター(一時預かり)の大切さ・素晴らしさ:パート2」の記事も参考にどうぞ。

6. 教育と啓発活動に関与する

動物福祉の重要性をSNSやコミュニティで発信し、他の人々にも支援の輪を広げることができます。意見は押し付けるのではなく、あくまでもシェアするという態度で♫

7. 地域の動物保護活動を応援する

地元の譲渡イベントに参加したり、支援者を増やすために友人や家族を巻き込んだりすることで、より多くの人々が支援に関わるきっかけをつくることができます。

8. 保護施設の需要に耳を傾ける

施設によって必要とされる支援の形は異なるため、直接地元の施設に問い合わせ、最も役立つサポート方法を確認することが大切です。

これらの行動を通じて、私たち一人ひとりができる小さなサポートが集まれば、多くの動物たちの未来をより良いものにする大きな力となります。寄付やボランティア活動は、「してあげている」という意識ではなく、「参加させてもらっている」という謙虚な気持ちで取り組むことが、双方にとって意義のある関係を築く鍵になるでしょう。

アメリカの有名な動物愛護団体:

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