フォスター(一時預かり)の大切さ・素晴らしさ:パート1

フォスター(一時預かりのボランティア)の大切さをお話しする前に、まず現在におけるアメリカのシェルターのシステムについて説明させて下さい。このシステムを理解すればフォスターをする事がどれほどの命を救う事になるのか分かって頂けると思います。ここではアメリカでの話しを例に出していますが、日本においてもフォスターの大切さは変わりませんので、十分参考にして頂けると思います。*尚、全米には沢山の愛護団体、シェルター、保健所があります。例外や違うシステムの所もあるかと思います事をご理解ください。

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自治体運営の保健所(ハイキル:殺処分率が高い)

基本的に「保健所(下の図:青い建物参照)」には、飼い主の飼育放棄、野良犬・猫、迷い犬・猫(その他の動物も含まれていますが、ここでは省略します。)など、ここに持ち込まれたり入ったりしてくる全ての動物を100%受け入れる義務があります。ですからここのシェルターはいつも満杯であり、殺処分の率がとても高くなってしまうのです。こういった自治体運営の保健所は「ハイキルシェルター」として非難されるケースもありますが、ほとんどの場合それは誤解であり、非難する人達はこういった状況を知らない場合が多いのです(なぜ保健所がこんなに動物であふれているのか=捨てる人間がいるから)。確かに中には、罪悪感もなく殺処分をする心ないスタッフや保健所もあるかもしれませんが、私の知っている保健所では、ボランティアやスタッフがウェブサイトに動物の写真を掲載したり、地元の愛護団体と頻繁にメールなどで交渉し、一匹でも多く引き取ってもらえるような努力をしています。ですがそんな努力もむなしく、あまりにも入ってくる動物の数が多すぎて到底追いつかず、まったく健康で、性質も良い子なのに安楽死せざるを得ない動物達を前に、涙を流すスタッフも沢山いると聞きます。

動物の収容施設を所有する愛護団体(ローキル:殺処分率は低め)

自治体の運営ではなく、民間で動物の収容施設を所有するこれらの非営利団体(下の図:茶色い建物参照)の有名な所は「サンフランシスコSPCA」、「ヒューストン・ヒューメイン・ソサエティ」などの団体です。サイズは大から小までさまざま。私の住んでいるシリコンバレー地区の近くにあるのは「ヒューメイン・ソサエティ・シリコンバレー」。2009年には約25億円をかけとても立派な建物を建設しました。建物の中にはカフェやドッグパーク、ペットショップ、グルーミング室、動物病院、トレーニング教室などもあり、譲渡希望の人だけではなく、それ以外のペットオーナーの人達も気軽に犬を連れて遊びにこれるような「コミュニティースタイル」を起用した全米初の団体です。建物にも風水などを取り入れ、シェルターの動物達にアニマル・レイキのプラクティショナーなどのボランティアを受け入れるなど、ホリスティックケアも受け入れるとてもオープンな団体です。(この団体の建物バーチャルツアー:正面とドッグパークエリア犬の部屋メディカルセンター猫の譲渡センターなどすごく立派!)ただしSPCAやヒューメインソサエティが名前に付いているからといって、必ずしも大きな団体である、またはきちんとした団体という事ではなく、SPCAやヒューメインソサエティという名称は基本的にどの団体でもつけられると言う事です。

▼シェルター、保健所、動物愛護団体などの関係を表した図

*赤い矢印はお互いが協力し合い、協力関係にある事を示しています。

米国のシェルター、保健所、動物愛護団体などの関係を表した図

動物の収容施設を所有しない愛護団体(ノーキル:病気などを除いて殺処分なし)

上の図にあるピンクの建物がこの愛護団体です。中には「ベストフレンズ・アニマルソサエティ」などのように、全米でも有名で大きなノーキルシェルターもありますが、彼らの場合は美しい自然の中に大きな収容施設を持っていますので、例外もあります。ここに該当する愛護団体の多くは個人が立ち上げた比較的小さな非営利団体が多いと思います。これらの愛護団体は地元にある数々の保健所のスタッフと提携をとり、保健所に通い譲渡できそうな犬や猫達を引き出し、自分の団体にて正式に保護します。「譲渡できそうな子」といっても中には怪我や病気で手術が必要になってくるとが分かっていながら引き出し、莫大な医療費がかかっても、その子に第二の犬生(または猫生)を与えてあげたいという事も多々あります。これらの団体に引き取られた犬や猫は必ず獣医の健康診断を受け、必要なグルーミングをしてもらい、ワクチンなどの接種や避妊/去勢手術を受けます。これらの資金は私たち市民からの寄付などからまかなわれているので、こういった団体に寄付をする事は大切な事です。*中にはお金もうけ目当ての心なき偽愛護団体も存在すると聞きます。注意するべき団体のサインとしては;

  • 健康診断、ワクチン接種、避妊・去勢手術を施さない。
  • 譲渡会にてすぐさま犬や猫を譲渡する(良識のある団体は譲渡会の日に動物を新しい飼い主に持って帰らせる事はしません。)
  • 譲渡希望の方の今までの動物経験についてなどの質問をしない。
  • 譲渡に際してきちんとした譲渡希望者とその団体における譲渡契約書などを要求しない。
  • その動物にかかる譲渡費の内容に関して、ワクチンの証明書、または治療などにかかった獣医からの請求書などの書類など、証拠になるものを要求した場合、それらを見せたがらない。

などがありますが、そういった団体を見極める事も私たちの責任であると思います。

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フォスター(一時預かり)の出番!

先ほど説明した動物愛護団体が保健所から動物を引き出す際に必ず必要なのが「フォスター(一時預かり)」のボランティアです。確かに収容施設を持たない団体にとっては保護した動物をおいておく場所としてフォスターさんが必要になるという単純な理由もありますが、それ以外にもフォスターさんにしかできない大切な要素があるんです。

  • 収容施設に長い間いるストレスを避ける事ができる。
    収容施設にた沢山の動物がいて、一日中檻の中、散歩もしてもらえる所もありますが、やっぱり十分ではありません。周りにいる動物達の中には恐怖を感じる子もいて、エネルギーに敏感な動物達にとってはストレスのたまる場所です。そのストレスから本来ならばおとなしく良い子なのに、吠える、飛びかかるなどの「問題行動」に出てしまう事多々。アメリカの保健所でも、シェルターにいた時は牙を向いていた子が、シェルターから出してあげたとたん、しっぽふりふりの人間大好きっ子に変わるなどの話しを多々聞きます。
  • 一家庭の中に暮らす事によって落ち着きを取り戻すことができる。
    特に犬にとって散歩や食事など毎日の習慣「ルーティーン」はとても大切です。収容施設は常に犬の鳴き声が響き渡る場所。一般家庭に入り、朝起きて、散歩、ご飯、遊び、お昼寝、などといった習慣を付けさせてやる事で、犬の精神状態は安定するのです。
  • 一般家庭のルールを学ぶ事ができる。
    今まで普通の家庭環境にいなかった(パピーミルや虐待ケースなどからのレスキューなど)動物が新しい飼い主さんに譲渡される前に、フォスターの家(一般家庭)で、家や家の外で人間と暮らす事についてのルールを学ぶ事ができます。子犬の時から社会化が出来ている事が一番なのですが、そうでないケースが多いのが今の現実。そういった動物でも人間社会の中で生きてゆく事を学ぶ事は十分可能です。時間がかかる事もありますが、辛抱強く学ばせてあげて下さい。
  • フォスターの家に先住犬や猫がいる場合、他の動物から自信や落ち着き、またはルールを教えてもらえる。
    先住犬や猫 に学ぶのは、人間に学ぶよりも効率的かもしれません。もちろんその先住犬や猫にもよりますが、自信のある動物と暮らすと今まで失っていたよい意味での自信を取り戻せるケースが多いと聞きます。
  • 信頼関係の回復。
    残念ながら、今までよい待遇にいなかった動物達は、人間が怖かったり、他の動物に攻撃的だったりする事もあります。そんな時もフォスターの家でもう一度人間との信頼関係を一から築き直す事ができます。フォスターをする人の経験度にもよりますが、男の人を極端に怖がっていた犬が経験豊かなフォスターさんの家で暮らし、怖がらなくなったケースもあると聞きました。
  • 施設にいるときと比べ、フォスターさんからしてもらえるトレーニングのクオリティーや頻度が高まる。
  • この動物を一時預かりしてくれるフォスターがいるという事で、愛護団体さんが動物を保健所などから引き出してくる事ができる。つまり引き出せなかったら明日殺処分だった動物の命が助かる!

ココまで読んで下さってありがとうございます。次回はフォスターになりたいなー、でも不安もあるし・・・という部分などについてお話したいと思います。

パート2はこちらからどうぞ!

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