【米国発】連載コラボ企画!第11回目:ピットブルの魅力

若き日のジュリエット
若き日のジュリエット

──Big Tree:現在はノア君というオスのピットブルとニューヨークに暮らすマホさんですが、昨年の7月に11年半生活を共にしたジュリエットさんが天国に。以来涙を流される事も沢山あったと思います。一年経っても、マホさんと天国のジュリエットさんは相思相愛である事は間違いなしだと思います。マホさん、ジュリエットさんを見送って、一年経った今、どのように感じますか?

──マホ:あまりにも長くべったり一緒にいた存在が横に居ないというのは、いまだに信じられないことですが、一年という日々の中で自分のこころの動きを確かに感じています。「忘れる」とか「慣れる」というのではなく「亡くしたものと今度は別の形で一緒に前に進む」という気持ちになったというのか…。それに、やっぱりノアの助けは大きいですね。次にやって来たノアがパピーだったのがすごくよかったと思います。

──Big Tree:パピーだったのはどんな所がよかったのですか?

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──マホ:何をしても笑わせてくれるので一日中笑顔で入れるところと、後はやっぱり若い生命力に満ち溢れているので、老年になってからのジュリエットとの生活から180度変わったところが気持ちの切り替えが出来てよかったと思います。

──Big Tree:マホさんの新しい家族、ノア君(ピットブル)は現在1歳ですよね?ノア君を飼う事になったきっかけを教えて下さい。

ノア君お誕生日
ノア君一歳のお誕生日!

──マホ:7月4日で一歳になりました!ジュリエットが旅立った直後、私の中では「ジュリエットの遺言」と呼んでいるのですが、「次の犬は愛嬌のいい、セラピードッグになれる要素をもったピットブルをアドプトすべし」というメッセージが心にすっと入ってきたんですね。でも、さすがにすぐに次の犬を探す気にはなれず、その間一時預かり(フォスター)の話がいくつか持ち上がったのですが、どれも話が流れてしまいました。そうこうしているある日、ニューヨークのクイーンズにあるピットブルレスキューのフェースブックページを眺めていて、ノアがペットスマート(アメリカのペットストア)でアドプションイベントに参加している写真に目が留まり、一目惚れ?というのか、「このわんちゃんに会ってみたい!」と思ったんです。そし てそのレスキュー団体に連絡を取り、アドプションが成立しました。

──Big Tree:日本に比べ、アメリカではピットブルという犬種の知名度は高いと思います。しかし、ピットブルに対する人々の印象は極端に良いか、極端に悪いかのどちらかな気がします。

この犬種を心底理解した著名人たちが日々の活動を通してピットブルという犬種のもつ社会的問題から犬種の特性の素晴らしさまでを紹介してくれているのは嬉しいですね。

──マホ:本当にその通り。熱烈なファンか、道を渡って避けてしまうほど恐怖か嫌悪を抱いた人か…という好対照な2つのグループに出くわすことが多いですね。メディアの影響で世間の人々はピットブルに対してかなり悪い印象を持っていますね。あることないことを人の心に植えつけているように思います。確かに世間には凶暴なピットブルがいるのも事実です。でもその後ろには必ずその問題を作り出している人間が居ることを忘れたらだめですよね。結局問題は、犬ではなく人間が全部作り出しているわけですから。ただ、ピットブルにはセレブの強い味方が一杯ついているのが救いです。カリスマ・ドッグトレーナーのシーザー氏もこの犬種を知りに知り尽くし、世間でのピットブルの誤解を解いていこ うと、常に声を上げてくれているので心強いです。アニマル・プラネットでも、『Pit Bulls and Parolees(ピットブルと保護観察対象者達、米アニマルプラネットにて放送中の番組)』『Pit Boss(ピット・ボス、米アニマルプラネットにて放送中の番組 )』など ピットブルの番組が色々と製作され、この犬種を心底理解した著名人たちが日々の活動を通してピットブルという犬種のもつ社会的問題から犬種の特性の素晴らしさまでを紹介してくれているのは嬉しいですね。

──Big Tree:そうですね。ニュースなどでも必ず「ピットブルによる」傷害事件というのは犬種名付きでフィーチャーされる気がします。例えば、柴犬に噛まれた場合だと、「○歳の女性が犬に噛まれる」っていうヘッドラインになる所をピットブルの場合は絶対に『○歳の女性が「ピットブル」に噛まれる!』という記事になっており、彼らに関する悪いニュースは広がりやすいような気もします。私もレスキュー団体でピットブルやピット・ミックスの対応した事がありますが、彼らをハンドリングする前はやっぱりいつも以上にその子に関するデータを読んだり、ボディーランゲージを見たりしてしまいます。あと、世の中には犬好きの方も、犬が恐い、または嫌いな方も、ピットブルに関する悪いニュースに影響されてしまっている方も、実際に過去のトラウマなどからピットブルが苦手な方もいますよね。ですから、ピットブルのオーナーになる方は、人間同士のコミュニケーションにもたけている方だとますますGOODやなーと思います。だって、色んな意味で差別され続けるピットブルへの間違った視点を、どれだけ自分の感情を捨てて、そして相手方へのジャッジメントも捨てて、ちゃんと伝える事ができるか、そして(可能であれば)その偏見を少しずつ解いてゆく、という事が嫌でも必要になってくるかも知れないと思うんです。

犬ってものすごく敏感なので、顔で笑っていても心が怒ってたり、怖がっているなんていう嘘はつけないし〜!正直、私は人間としてまだまだ成長していかんとダメな部分があるので、「今の」私には無理かも・・・と思います←弱気!あ、でも他の犬達も、もちろんピットブルの事も大好きです(笑)。そんな中でも、とある状況に遭遇すると、恐怖感だったり、ドキッとする感情が芽生える時もあるのも正直な所です。だからといって私はピットブルを否定しているのか?差別しているのか?うーん、それは違うんじゃないかなーと思います。人間って色々で、シーザーさんみたいに、シャキっとできる人もいれば、どれだけ頑張ってもなかなか出来ない人もいる。そういう人間達の存在も認めてあげたいなーと思います。犬と人間の関係って、出来ない部分の自覚と成長を補い合える関係やと思うんです。私のお友達が、「動物は私たちの師であり、友であり、子供であり、親であり、いろんな多面性を持っている」と言っていました。そういう感覚でいると、肩の力も抜ける気がします。

ピットブルを怖がっていたり、嫌悪している人の中には過去に実際怖い体験してそうなってる人もいますが、そうではなく他からの情報のみでネガティブな感情を抱いている人が本当に多いと思います。

──マホ:ピットブルを怖がっていたり、嫌悪している人の中には過去に実際怖い体験してそうなってる人もいますが、そうではなく他からの情報のみでネガティブな感情を抱いている人が本当に多いと思います。実際に何か嫌な経験があるのか質問しても「みんながそう言ってるから…。」という返答が多いです。メディアの過剰な煽りの影響ですね。メディアで取り上げられる事件を起こすようなピットブルはどんな飼い方をされているのか?今まではそんなことは話にもあがりませんでした。その裏にある人間のことを語ってくれるようになったのは本当にごく最近です。NFL(アメリカンフットボールリーグ)の選手マイケル・ヴィック闘犬飼育・虐待事件は、ある意味ピットブルの事件の焦点の位置を変えた画期的な出来事でした。この夏もニューヨークのブロンクスで闘犬目的に飼育されていた50匹のピットブルたちがアパートの地下から保護されましたが、今週までに3分の2ほどの犬たちが新しい家を見つけたり、レスキューで保護されています。かつてはこういう形で保護されたピットブルは全部安楽死でしたが、あのビック事件以来、個々の犬の気質を見極めて、家庭犬になれる犬にはちゃんとセカンド・チャンスが与えられるようになりました。なので、ピットブルと一括りにするのではなく個々の犬で区別し、また事件に関わるピットブルの裏にいる人間に焦点を当てていくと、世間一般の人のピットブルへの概念も変わっていくだろうし、今無実の罪で苦しい思いをしているピットブルへの不公平な扱いが減っていくのではと期待しています。

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──Big Tree:マホさんが、短い言葉でピットブルを表すとすればどういう言葉になりますか?

──マホ:色んな意味で「現在、世界で一番不公平な犬生を背負った犬種」でしょうね。

──Big Tree:ズバリ、ピットブルの魅力とは何でしょう?!

──マホ:私自身もですが、ピットブルの飼い主はリピーターが非常に多いですね。また家族・友人が飼っていたピットブルと触れ合って「次は自分も是非!」と飼う人も多いですね。シェルターでボランティアをされてる人たちも、最初はピットブルに対してかなり抵抗があったのに、気がついたら一番ひいきにしてる犬はいつもピットブルだったりするようです。ピットブルの飼い主への愛情や人間への愛、また自分たちの「生きる姿勢」というのかが彼らの一番の魅了でしょうね。本当にいっつも真直ぐ真剣で、惜しみなく愛情表現してきます。彼らの「全身全霊で犬生を生きている」という感じがいいです。そういうピットブルと触れ合って一度彼らの魅力を発見すると病みつきになるんですよ(笑)

──Big Tree:もしも、ピットブルに長所と短所があるならば、何だと思いますか?

──マホ:それぞれの犬によって個人差がありますが、一般的には飼い主として一緒に暮す面でいいのは、まずローメインテナンスな犬種であること。比較的健康で、持病の少ない犬種なのでその点で楽なのと、短毛で匂いが少ない(わたしの独断の統計でピットブルは比較的犬臭さがない。ジュリエットは全くなしでした。ノアもほとんどなし)。またきちんと必要な運動をさせていると、後は家の中ではカウチポテト犬にもなり都会のアパート飼いも十分できます。また吠えないタイプの犬なので無駄吠えの問題は少ないです。もちろん飼い主がきちんと必要な運動と頭の刺激を与えている場合の話ですが。この犬種はもともと人間が大好きになるように改良されているので、人間と仲良くなることが本当 に得意で、飼い主を喜ばせるのが一番の楽しみみたいなところがあります。人間に忠実なのでトレーニングがしやすいのも利点です。後は痛みに非常に強い。少々のことでは弱音を吐かないですね。

悪い面では、何と言っても最初に人間が作り出したのが「闘犬目的」であるために、その血統を引き継いでいる犬は、他の犬を攻撃する傾向があります。またピットブルテリアというだけに、テリアの気質でPrey Drive(プレイ・ドライブ)が強い犬が多く、小動物を追いかけ攻撃する傾向もあります。テリアの気質が顕著な点といえば、インテンシティー(強度)ですね。無我夢中になったらその執念というのはすごいものがあります。また、ピットブルの場合吠えないのは長所でもありますが、攻撃寸前まで全く沈黙で彼らの動き方を認識していないと速攻で次の動作に入って攻撃している…ということがあるので、行動の序章が吠えるタイプの犬(例:ジャーマンシェパード、チワワ、ヨーキーなど)のそれとの行動の仕方の違いをしっかり理解しておきたいですね。それから、ピットブルは筋肉質なので大変力が強く、きちんとトレーニングしておかないと散歩のとき引っ張りまわされて大変な思いをすることになります…。スタミナ豊富なのは長所に もなりますが、持久性が強くてくたばらない、諦めないという点が短所に現れてしまうと飼い主である人間は精神的にも肉体的にも勝てないのでオン・オフスイッチの切り替え、頂点まで昇りつめさせないよう飼い主が彼らの力をコントロールできるようにしておくことですね。

──Big Tree:ピットブルを飼う場合、どんなタイプの人ならピットブルという犬種そしてその気質を十分に満足してあげられる飼い主さんになりそうですか?

──マホ:そのピットブルがどんな性格の犬でも、「ピットブルの飼い主であることへの世間の風当り」としっかり付き合っていけるタイプでないと精神的に大変だと思います。根性の座ってる人(爆)これは飼う前に考えてるよりもっと大変なことなので重々に承知していてほしいです。誰でも自分の愛犬が他人から不公平に扱われるのは辛いですよね。でもそれが必ずあるので、そこでへこたれず、また感情的にならず、愛犬の犬種を堂々と自慢できる飼い主になれる人が向いていると思います。そのためには愛犬の訓練もしっかり出来る人。この犬種を選び飼い主になった限りは一緒に莫大な責任みたいなものがついて来るので(他の犬種の飼い主の数倍の責任)それを全うしていこうという気持ちが必ず必要になります。

──Big Tree:マホさんの愛犬ノア君は生後7ヶ月でマホさんと暮らし始めましたよね。ノアくんのピットブルとしての気質が見える部分、そしてノアくんという一匹の個体としての個性ってどんな感じですか?

ノア君

──マホ:ノアって別に普通の犬ですよ(笑)ほんとわたしにしたらただの一匹の犬。でも、もちろんピットブルという犬種だし、ほとんどの人はただの犬というよりピットブルとして見てるようなので、わたしももちろんピットブルのノア、その飼い主である自覚をしっかり持ってます。ピットブルに共通する面白い気質は、寝るときに身体全部をブランケットの中にもぐらせて寝ること。最初は窒息しないかと心配になりましたが、これが「ピットの寝方」と分かってからはそれが面白くて仕方ないですね。二匹共私のシャドーというニックネームをつけられるほどいつも私の後をついて回るし、スキンシップ大好き!な愛犬たちなのもピットの気質かなと思います。ノアは本当に甘えん坊全開みたいなとこ ろがあって、とにかく私に身体をくっつけていたいようです。ノアはピットブルにしてはPrey Drive(プレイ・ドライブ)がほとんどなく、衝動的に動くものを追いかけたりする行動を見せることが少ないです。エネルギーレベルも平均か平均以下ですね。

──Big Tree:ノア君と暮らす中で、マホさんが一番大切にしていることは何ですか?

──マホ:愛犬との毎日をとにかく楽しむことでしょうね。犬と暮すことが変なストレスになっては元も子もないというか、犬を飼ってる意味がない。犬を含めた家族全員が不幸せだと思うのですね。楽しいことも、難しいことも、しんどいことも、犬との生活全てを「楽しみ・糧」にしたいと。ノアが立派な犬に育つことが今のわたしの一番の務めであり、ノアと一緒に毎日勉強しながら成長していきたいと思っています。

寺口麻穂

寺口麻穂
ドギープロジェクト、オーナー、米国ニュージャージー州のシェルターボランティア、アダプション・カウンセラーなど犬のしつけ・訓練に関するスキル、犬とのコミュニケーション法、犬の心理学などの知識を備え、長年の経験を積んだ犬のスペシャリスト。アメリカで発行されている日本人向けの情報誌、U.S. FrontLineにて「ドギーパラダイス!」というコラムも連載中。
URL: www.doggieproject.com
Blog: 犬のこころ
Facebook: ドギーパラダイス!

プロフィール:1988年に大阪を出て、「英語」と「世界」を学ぶためサンフランシスコ・ベイ・エリアに上陸。大学・大学院で文化人類学を研究した後、1999年に愛車で大陸横断し、東海岸に移住。2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件をきっかけに「子供の頃からの夢を現実に!」と犬のプロになる決意をし、人間の専門家から犬の専門家にキャリアチェンジ。地元のアニマル・シェルターでボランティアをしながら、個人でビジネスも立ち上げ、犬と飼い主がより充実した生活を送れるようその指導に日々励んでいる。11年前にシェルターから酷い虐待を受け捨てられたジュリエットという女の子のピットブルをアダプトする。この11年間、「運命共同体」としてお互いなくてはならない存在になる。2011年7月25日、沢山愛されたジュリエットは推定13歳で虹の橋へ。2012年2月シェルターにて生後5ヶ月のピットブルテリア、ノア(♂)を譲渡し、共同生活を始める。

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