【米国発】連載コラボ企画!第4回目:犬と朝の散歩

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今日は犬と散歩についてドッグスペシャリストの麻穂さんに話しを伺いました。〜Big Tree for Animals

──Big Tree:一般的にアメリカでもよく聞く話ですが「散歩は忙しくて毎日行ってられないんだけれど、ウチは庭が大きいから運動も十分させてあげられるし大丈夫よ。」とか「大きい犬は大きな庭のある家でないと可哀想だ。」なんていう誤解がまだまだあると思うんです。「大きな庭で遊ばせたり、ドッグパークに連れて行けば散歩は必要ないんじゃないの?」という質問に対してどうお答えになりますか?

──麻穂:ニュージャージー州郊外のアニマル・シェルターに犬をアダプト(里親)しにくる家族の多くが、アダプション・カウンセリングの際に同じようなことを言いますね。彼らは囲いのある大きな庭を絶対と思い、そんな条件を提供できる自分たちのことを最高の飼い主だと思っています。そんな時のわたしの定番な答えは「囲いのある庭があるのはとても便利でそれはボーナス。でも、それに頼りきってしまうと、愛犬に最良の条件を与えていないということを覚えていてほしい。庭はないけどマンハッタンのアパート暮らしをしている犬の方が、犬として幸せなんじゃないかと思うこともある(庭がない事もあり散歩は欠かせないから)。」犬にとってメインな運動は「散歩」でなければいけないと強く信じているんです。お庭で遊ばせるのも良し!ドッグパークも良し!(個人的にはそれなりの意見がありますが)でも、それはあくまでもエクストラ。それとは別に、犬には毎日2回以上の散歩が絶対条件です。

お庭で遊ばせるのも良し!ドッグパークも良し!でも、それはあくまでもエクストラ。犬には毎日2回以上の散歩が絶対条件です。毎日同じことをするというリズムは犬の心の安定に大変大事です。

また、飼い始めた当初は珍しさや興奮から、喜んで愛犬を外に連れ出す飼い主さんも、犬を飼ったことにより自分の生活がより忙しくなってくると、囲いのある庭をいいことに、今日だけはお庭で…というのがどんどん毎日になってしまって、お散歩は週末だけとか、気が向いた時だけになってしまう飼い主さんも多いように思います。でも、散歩は毎日必ずする(悪天候の場合を除き)ということが大事なのです。犬は規則的なことの繰り返しの生活で安心を感じられるので、毎日同じことをするというリズムはこころの安定に大変大事です。週末の穴埋めは、実は犬には穴埋めになっていないことを理解しておいてください。

──Big Tree:どうして「散歩」がそんなに大切なのでしょうか?

──麻穂:犬は好奇心の大変強い動物です。そして、臭いを嗅ぐという行為で頭を刺激し、情報を得ます。より多くの臭いを嗅ぎ分けたり、分析したり、また自分の臭いを残すという行為は犬の生活には欠かせないこと。その機会を作ってあげないということは、飼い主としての責任遂行ができていませんよね。自分の家の庭の臭いはその子にとっては決まりきったもの。それだけでは犬は満足できません。よく使う例え話で、もしこの犬がティーンエージャーの息子か娘で、家から一歩も出さないとするとどんなことが起こりえると思いますか?と質問します。すると親御さんたちは「そんなことしたら子供たち気がおかしくなってしまって大変なことになるか、すきを狙って逃げ出すんじゃないかな…。」といわれます。犬もまったく同じです。外からの刺激が本当に大事なのです。

また、前を向いて歩くという行為は、ハンターの遺伝子をもった犬にとって大変意味のある行為でもあります。仕事をしている感を味合わせることが出来るのです。その前を向いて歩く行為(散歩)が自分の飼い主となら、自分のリーダーと共に共有できる、そして仕事感を味わえる貴重な時間ということになるのです。

──Big Tree:老犬の散歩の時間、回数、特に気をつけてあげる事などあれば教えて下さい。

──麻穂:老犬になるとトイレが近くなることが多いので、所要時間ではなく、回数を増やしてあげることが大事だと思います。また、厳しい天候の際はトイレのみでお散歩を無理にする必要はないと思います。時間帯も負担がかからない時間帯をみつけてあげるのが良いと思います。老犬の面白いお散歩の行動なのですが、13〜14歳くらいになると異常なほどに何の臭いも嗅ぎたがり、草の中に顔を埋めて長い間臭いを嗅ぎ続けたりするようになります。また宝物でも見つけたかのように目を輝かせ丁寧に丁寧に時間をかけてひとつひとつのポイントの臭いを嗅ぐようになります。こんな時は焦らせずにじっくりやりたいようにさせてあげるのが良いと思います。これで頭の刺激をたっぷりさせているのだと思います。後は目が見えにくくなってきていたり、耳が遠くなっていたり、機敏に動けなくなってくるので、怪我をしないように注意を払ってあげることも大事ですね。

犬のサイズや年齢による散歩時間と頻度

*散歩の量は犬のサイズだけではなく犬種などによっても運動内容等は変わります。ご自分の犬の犬種の運動量を知っておくのは大切です。

健康な大型犬&中型犬

毎朝45分〜1時間以上
毎夕30分〜45分以上が理想。

【注意事項】
どうしても短い散歩しか出来ない日は、夕方の散歩を短く。朝は必ず長く。


健康な小型犬

毎朝30分〜45分
毎夕20分〜30分以上が理想。

【注意事項】
小型犬でもジャックラッセル・テリアなど、犬種によっては45分以上の散歩が必要な場合もあります。どうしても短い散歩しか出来ない日は、夕方の散歩を短く。朝は必ず長く。


シニア犬

トイレが近くなることが多いので、所要時間ではなく、回数を増やしてあげる。厳しい天候の際はトイレのみでお散歩を無理にする必要はない。

【注意事項】
負担がかからない時間帯を選んであげる。

──Big Tree:小型犬はお散歩はあまり必要ない、と思われる方もいますよね。

──麻穂:「小型犬はお散歩しなくてもいいから『お座敷犬』と呼ぶのでは?」と誤解されている方が時々いますが、犬はどんな犬種であっても絶対に家の外で散歩する必要があります。これを怠ったがためにさまざまな問題行動を起こしてしまうこともありますので、必ず外をお散歩してあげて下さいね。

──Big Tree:なるほどねー。「バランスがくずれてしまった犬をリハビリし、飼い主をトレーニングする」で知られるドッグ・トレーナーのシーザー・ミランさんも「自分の犬の事はまず『犬』→『犬種』→『犬の名前』という順番でみてそのニーズを満たしてやってほしい。」と言ってますよね。どんなに小さなチワワでも犬は犬なんですね。その犬や犬種のニーズ(散歩)を知りそれを満たす事が犬の心のバランスを整えるって事ですね。それでは今回のお題にもある、「朝」の散歩に特に意味はあるんですか?

──麻穂:犬も人間も大抵の動物は寝ている間に体も頭も休ませて、次の日のためにリセットさせますよね。朝起きた時、犬も人間も含めて、わたしたちは一番フレッシュなエネルギーで漲っているべきなのです。そしてそのフレッシュなエネルギーを犬にとってとても大事な行為、飼い主との散歩(仕事)で始めることで、犬は心身ともに大変満足することができます。そしてその散歩(仕事)から戻ったら、朝ごはんというご褒美で褒めてあげることで、犬は満足してその日一日を過ごせます。もし、犬を残して長時間外に出る家庭なら、これは必至ですね。これを怠ると問題行動が出てくる可能性が大です。

散歩は一日2回(以上)。特に朝の散歩にウエイトを置いてほしいと思います。わたしたち人間は忙しいスケジュールの中で生きているので、朝に余分な時間をつくるのは大変難しいことは承知ですが、犬を飼った限りは、今までよりもうんと早起きして犬と散歩に出るというのは飼い主の責任の一つです。飼う際の飼い主の覚悟ですね。でも、これは愛犬だけでなく自分にとっても大変よい習慣なのだから、ありがたく思って実行すべし。わたしはジュリエットを飼い始めたころ、一時間早く起きる決意(大袈裟)しました。

犬の散歩量はサイズや年齢だけではなく、そのブリード(犬種)にもよります。自分の飼っている犬の種類の特徴を学び、その散歩量を調節して下さい。

──Big Tree:散歩の際に飼い主の前を歩かせたり、犬の気のおもむくままに地面をクンクンと臭わせたりするのは良くないと聞いたんですが、それは本当ですか?私事になりますが、そういうルールに集中しすぎて、リラックスして散歩できない時がある頭の固い人がココにいるんですが(笑)それも良くないですよねー?その辺りのバランスをとる為に、何かアドバイスはありますか?

──麻穂:いくら散歩が仕事感といっても、愛犬も飼い主も楽しみたいものですよね。でないと負担になるし、意味がない。なのでそんな時はめりはりをつければいいのだと思います。たとえば最初の5分は規律正しくコントロールされた状況のお散歩をして、ある一定の時間がくれば、「OK」というサインでそのコントロールを解き(これがポイント!)飼い主も愛犬もリラックスでしたいように歩けばいいと思います。

この過程で愛犬が前を歩くのもまったく問題なし。ただ、愛犬が息も出来ないくらいに首をしめたような状態で飼い主をぐいぐい引っ張ってというのは危険だし、見苦しいし(笑)絶対によくないですね。そして、またコントロール下の散歩状態に戻したければ少しの時間戻る。重要なことは愛犬に「それ」をしっかり指示すること。今は何をしないといけないのかということをきちんとコミュニケーションしてください。

わたしは愛犬とお散歩するようになって、花や木から季節の変わりを日々楽しめる経験ができたり、新しいお店ができたのを発見したり、他の犬の飼い主さんやご近所さんと立ち話ができたり、そしてなんといっても一人ではなかなか腰が上がらない散歩も愛犬となら!とひょいとできますよね。そんな機会ができたことがとてもありがたかったですね。散歩することで、犬がいないと体験できない事なんかが出来て、それは特権だと思います。わたしの場合は愛犬との散歩中にいろいろな良いアイデアが頭にぽんぽん浮かんでくるので、大切なひらめきの時間に使っていました。

ジュリエット

──Big Tree:ホント犬は私たちに色んな経験をさせてくれますね。本当に感謝です。麻穂さん、今回もありがとうございました。次回もよろしくお願いします!なお、Big Tree for Animalsではこの記事を、一ヶ月前の7月25日、大好きな麻穂さんからのキスを、おでこにいっぱい受けながら虹の橋に渡った大切な愛犬&運命共同体の「ジュリエット」に捧げます。ジュリエットが少しでも幸せな余生をすごせる為に沢山の愛情を注いでこられた麻穂さん。ジュリエットさんは最後まで感謝でいっぱいだったと思います。彼女と麻穂さんがニュージャージー州の町の景色を楽しみながら散歩している姿が目に浮かびます。幸せだったね、ジュリエットさん、ありがとう。虹の橋から麻穂さんの事を見守ってあげて下さいね。ジュリエットさんについては、まほさんのブログ「犬のこころ」よりどうぞ。

寺口麻穂

寺口麻穂ドギープロジェクト、オーナー、米国ニュージャージー州のシェルターボランティア、アダプション・カウンセラーなど犬のしつけ・訓練に関するスキル、犬とのコミュニケーション法、犬の心理学などの知識を備え、長年の経験を積んだ犬のスペシャリスト。アメリカで発行されている日本人向けの情報誌、U.S. FrontLineにて「ドギーパラダイス!」というコラムも連載中。
URL: www.doggieproject.com
Blog: 犬のこころ
Facebook: ドギーパラダイス!

プロフィール:1988年に大阪を出て、「英語」と「世界」を学ぶためサンフランシスコ・ベイ・エリアに上陸。大学・大学院で文化人類学を研究した後、1999年に愛車で大陸横断し、東海岸に移住。2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件をきっかけに「子供の頃からの夢を現実に!」と犬のプロになる決意をし、人間の専門家から犬の専門家にキャリアチェンジ。地元のアニマル・シェルターでボランティアをしながら、個人でビジネスも立ち上げ、犬と飼い主がより充実した生活を送れるようその指導に日々励んでいる。11年前にシェルターから酷い虐待を受け捨てられたジュリエットという女の子のピットブルをアダプトする。この11年間、「運命共同体」としてお互いなくてはならない存在になる。2011年7月25日、沢山愛されたジュリエットは推定13歳で虹の橋へ。2012年2月シェルターにて生後5ヶ月のピットブルテリア、ノア(♂)を譲渡し、共同生活を始める。

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