──Big Tree: 私が子供の頃は、成犬ではなく、子犬をペットショップから買ったり、近所からもらって来たりするのが当たり前の世界でした。現在でも日本ではその傾向が強いと聞きます。アメリカでももちろん子犬をブリーダーさんから購入したり、愛護団体などから譲渡してきたりするケースも沢山あります。しかし、日本の様な子犬思考(?)はそこまでなく、私が経験した愛護団体からのお話になりますが、譲渡の場合だと、そのうちの約70〜80%は成犬のような気がします。
──麻穂:ご存知のように、これには理由があるんですよね。なぜかというと、シェルターに子犬はあまりいません。だから譲渡のほとんどは成犬。それはなぜか?人は子犬を可愛い可愛いと飼って、そのうち一年以内にぐんぐん力も強く体も大きくなり、またわんぱくになって手がつけられなくなっていくと、どう暮らしていっていいかわからず、「トレーニングをする前に」諦めてシェルターに持って来るからなんです。成犬を捨てても、子犬を捨てる人は稀ですよね。
──Big Tree: おお!私はシェルターではなく、そのシェルターから犬を引き出し譲渡してゆく愛護団体しか実際に経験してないので、思いつきませんでした。妊娠したお母さん犬をお腹の赤ちゃんも含めてシェルターから保護してきた場合を除けば、子犬は確かに少ないですね。
うち愛犬達の場合は、2匹とも成犬の時に我が家に来ました(1歳と3歳)。比較的私の場合はそれをスムーズに受け入れた記憶があるんですが、やはり子供の頃は「子犬がほしい〜」って思ったりしたんですよね。アメリカの譲渡会などで「成犬ではなく子犬を飼いたい」と言って来る方々には「子犬は目が離せないので大変ですが、この子にきちんとしたお世話をしてあげる時間はありますか?」っと確認します。私も一度子犬のフォスターを短期間した事があるのですが、そりゃー目が離せなくて大変でした。コロコロと走り回ってとても可愛かったのですが、ああ、私には成犬があってるなーと。。。(笑)それぞれに利点、欠点があると思うので、麻穂さんに子犬を飼う場合と成犬を飼う場合の利点と欠点をあげて頂きました。
自分の環境によって飼う犬の年齢を考える
──Big Tree: お子さん持ちのご家庭だと、子供さんが「子犬がほしい〜!」となってきますよね?子供に「絶対世話をする?最後まで責任を持つ?」と約束させてもそれは守らない確率は高いのが現実(私もそうでした〜汗)。ですから親である大人が「この犬の面倒を最後まで見る事になるという覚悟」が出来ているかを確認し、答えがノーであれば「飼わない」という結論を出す事で、命の尊さを教えてあげてほしいと思います。
──麻穂:本当にごもっともです!わたしはアダプション・カウンセリングの際に「この子が責任をもってこの犬の世話をするというので。。。」という親御さんには過去の自分の経験も含め、「子供にとって、学校・友達・ゲームだとかファッションだとかTV番組とか芸能人とか自分の興味あるものが世界で一番であって、またそれは子供の通る道でもあるから仕方のないことで、その子供をあてにしては絶対にだめですよ。まず大人が実際に犬のお世話ができるという状況にある事を確認し、またなるべく子供だけで犬の散歩などはさせないようにして下さい。」と説明するようにしています。
スポンサードリンク──Big Tree: 麻穂さんは子犬と成犬どちらの犬と暮らしたいですか?
──麻穂:生後間もない子犬を引き取って一から犬の勉強をしたいという強い希望もありますが、「生活の楽さ」を考えれば成犬を引き取ることを選びますね。
──Big Tree:子犬の可愛さ、楽しさは皆さん大体想像が付くかと思います。成犬の場合、しつけができないのではないか、懐かないのではないかなど色々な通説がありますが、実際の所、成犬を迎えるというのはどんな感じなんでしょう?
──麻穂:わたしがジュリエットをアダプトした時も結構聞かれましたよ。「2-3歳の成犬なんて今からでも懐いてくれるの?」とか「大人なのにトレーニングなんてできるの?」とか。それを全部「はい!問題なし!」と実証しましたけど(笑)ジュリエットは初日からわたしにこころを開いていましたし、今考えれば3日目の夜、わたしのベッドにジャンプして初めて添い寝してきたとき、きっと「100%信頼します」と言って来たのかと思います。
シェルターで何千匹の成犬(老犬でさえ)が新しい家にもらわれっていった実例をみてきていますが、懐かなかった…という話を聞いたことは皆無ですね。反対に「家に連れて帰ってきたその日から、もうすでに数年一緒に暮らしているような気にさせられた」というお話を聞かせてもらう方が断然多い。
もちろん最初はお互いの勉強のし合い期間というものはあっても、「懐かないのでは?」という心配はご無用!これは保証します。
──Big Tree:「家に連れて帰ってきたその日から、もうすでに数年一緒に暮らしているような気にさせられた」というのは我が家の場合もまさにそうでした!成犬でも子犬の様に無邪気な子や元気いっぱいの子もいますよね。
──麻穂:犬は年齢より犬種によってでる性格の方が顕著だと思います。無邪気な犬種はいつまでも無邪気だし、気品の高い犬種や距離をもって人と接する犬種は子犬の頃からそういう性格や行動をするし。日本で家族で飼っていた三河柴犬のプルートは8週間ほどの時にもらってきましたが、いわゆる子犬みたいに跳ね回ったりきゃんきゃん泣いて注目を引くようなことは一切しませんでした。子供だったわたしたちにはちょっとがっくり感もありましたが、その代わり世話はしやすかったです。日本犬の多くはこういうケースが多いと思います。
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──Big Tree:子犬を譲渡するのにパーフェクトな家庭環境やライフスタイルを教えて下さい。
──麻穂:家族に一度子犬を育てた経験のある方がいる方がいいですね。また、毎日長時間家に誰も居ない家は子犬を飼うには全く適していません。子犬の間により多くの社会性を養う機会を与えるべきなので、多忙な家族では難しいでしょう(例:子供たちの習い事のスケジュールがびっしりで子犬に時間を取れないなど)。近所や友人・知人にフレンドリーな犬を飼ってる人がたくさんいてプレーグループなどの時間を定期的にもてる環境がいいですね。時間に余裕がある、精神的にも余裕がないと子犬を育てるのはストレスになると思います。
──Big Tree: それでは成犬を譲渡するのにパーフェクトな家庭環境やライフスタイルはどんなでしょう?
──麻穂:成犬の利点の時にも挙げましたが、その犬の性格や行動などが大体わかるので、その犬の飼い主としてマッチしたライフスタイルや性格が見分けやすく、新しい家族をマッチングしやすいはず。後、その犬種の特質を顕著に出す犬の場合は、その犬種を飼ったことがある家族がいいと思います。
子犬がほしかったけど、自分の環境・状況が許さない場合は、是非成犬のアダプションを考慮してみてください。色んな意味で(①一匹の犬の命を救った=他のホームレス犬にシェルターでもレスキューでもそのスペースとアダプションのチャンスを提供できた。②成犬がこんな楽だということを体験で理解できる。など)成犬を引き取ったということの喜びを味わえるはずですよ!
──Big Tree:今回のトピックには直接関係ないけれど、一匹の犬が譲渡されると、その犬がいたシェルターのスペースが空く、するともう一匹の犬が入るスペースができる。。。「一匹の犬を譲渡する事によって、本当は2匹の命をつなぎ止める事になる」んですねー。それって大きいな〜。日本ではついに夜8時以降の生体販売が来年6月から禁止になるそうです(犬や猫の夜間展示を禁止=来年6月から実施へ―環境省)。まだまだ改善するべき所はありますが、それでも大きな一歩ですよね。こうなれたのも、日本の消費者の皆さんが声を上げてこられた結果だと思います。これからの日本に期待します!麻穂さん、今回もありがとうございました〜☆
最後に・・・おまけ☆
ネバダ州にあるネバダ・ヒューメイン・ソサエティからのこれまた素敵なプロモーションビデオ♬うれし泣きしますねーこれ。動物をシェルターや愛護団体から迎えるのは、動物だけではなく、私たち人間のこころも救われるんだなーって再確認したビデオでした。最後までご覧下さいな♬
寺口麻穂
ドギープロジェクト、オーナー、米国ニュージャージー州のシェルターボランティア、アダプション・カウンセラーなど犬のしつけ・訓練に関するスキル、犬とのコミュニケーション法、犬の心理学などの知識を備え、長年の経験を積んだ犬のスペシャリスト。アメリカで発行されている日本人向けの情報誌、U.S. FrontLineにて「ドギーパラダイス!」というコラムも連載中。
URL: www.doggieproject.com
Blog: 犬のこころ
Facebook: ドギーパラダイス!
プロフィール:1988年に大阪を出て、「英語」と「世界」を学ぶためサンフランシスコ・ベイ・エリアに上陸。大学・大学院で文化人類学を研究した後、1999年に愛車で大陸横断し、東海岸に移住。2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件をきっかけに「子供の頃からの夢を現実に!」と犬のプロになる決意をし、人間の専門家から犬の専門家にキャリアチェンジ。地元のアニマル・シェルターでボランティアをしながら、個人でビジネスも立ち上げ、犬と飼い主がより充実した生活を送れるようその指導に日々励んでいる。11年前にシェルターから酷い虐待を受け捨てられたジュリエットという女の子のピットブルをアダプトする。この11年間、「運命共同体」としてお互いなくてはならない存在になる。2011年7月25日、沢山愛されたジュリエットは推定13歳で虹の橋へ。2012年2月シェルターにて生後5ヶ月のピットブルテリア、ノア(♂)を譲渡し、共同生活を始める。
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