ペットは大切な家族の一員です。しかし、人生には予期せぬ出来事がつきもの──。突然の事故や病気による入院、また持病の悪化など、私たちは明日何が起こるかわかりません。そのような不測の事態に直面した時、最も心配になるのが大切なペットの存在ではないでしょうか。飼い主さんが亡くなった後、飼い主さんの親戚や家族によってペットが保健所に持ち込まれてしまう事を避けるための準備はとても大切です。
特にペットと一人暮らしの場合、緊急入院などで突然ペットのお世話ができなくなってしまうと、ペットは適切なケアを受けられない状況に陥る可能性があります。また、私たち人間の寿命は、多くのペットより短いこともあります。特に、オウムや亀などの長寿のペットを飼っている場合、飼い主が先に他界してしまう可能性は十分にあります。
このような状況に備えて、愛するペットを守るための準備について、まとめてみました。
なぜ事前の準備が必要なのか
ペットの寿命は種類によって大きく異なります:
- イヌ:10-17年
- ネコ:12-20年
- オウム:20-50年以上
- リクガメ:50-100年以上
突然の不測の事態に備えて、ペットのための準備をしておくことは、責任ある飼い主としての大切な役割です。特に、飼い主が急な入院や事故に遭った場合、適切な引き取り手が見つからないと、ペットが保健所に収容されてしまうリスクがあります。
保健所に収容されたペットは、新しい飼い主が見つからない場合、一定期間の収容後に(最悪の場合はガス室で)殺処分される可能性もあります。また、急な環境変化によるストレスで健康を害することも少なくありません。事前に緊急時の対応策を準備しておくことで、大切な家族であるペットが保健所に収容されることを防ぎ、安全で安心できる環境を維持することができます。
法的な準備:ペット信託と遺言書
ペット信託について
ペット信託は、飼い主が他界した後のペットの世話を法的に保証する制度です。2007年の信託法改正により、日本でもペット信託が可能になりました。
遺言書での対応
遺言書にペットの引き取り手と必要な費用について明記することができます。公正証書遺言として作成することで、より確実な法的効力を持たせることができます。
財政的な準備
必要な費用の試算
- 食費(月額)
- 医療費の積立
- トリミングなどのケア費用
- 緊急時の備え
資金準備の方法
- ペット保険への加入
- 突然の病気やケガに備える
- 高額な治療費に対する備え
- 老齢期の医療費増加に対応
- ペット専用の資金管理
- 通常の普通預金口座を「ペット用」として分けて管理
- 毎月の予算から一定額を自動振替で積立
- 緊急時にすぐに使える
- 長期的な資金確保
- 定期預金:安全性が高く、計画的な積立が可能
- 郵便局の積立サービス:定額貯金や自動積立
- 信託銀行のペット信託:法的な安全性を確保
重要なポイント:
- 急な出費に備えて、一部は普通預金など、すぐに引き出せる形で保管
- 将来の医療費なども考慮した金額設定
- 定期的な見直しと調整
実践的な準備:緊急時の保護体制構築
理想的な引き取り手の条件を考える
- ペットの習性を理解している
- 十分な飼育環境がある
- 経済的な余裕がある
- 終生大切にしてくれる
- ペットとの相性が良い
緊急連絡体制の整備をする
1. ペットの緊急連絡ノートの作成と携帯方法
ペットの緊急連絡ノートに記載すべき情報
- ペットの基本情報
- 名前、年齢、品種
- マイクロチップ番号
- 予防接種の状況
- 持病や服用中の薬
- かかりつけ獣医師の連絡先
- 緊急連絡先(優先順位をつけて複数記載)
- 氏名
- 続柄や関係
- 電話番号(携帯・自宅)
- メールアドレス
- 自宅住所
- 飼い主の情報
- 氏名
- 血液型
- アレルギー
- 持病
- かかりつけ医
- ペットの緊急連絡ノートを制作しました。こちらより無料でダウンロードしていただけます。ご自宅で印刷し、内容を記入して使って下さい。*当ノートには法的な効力はありません。
ペットの緊急連絡ノートの設置場所
- 携帯用(財布・スマートフォンケース)ペットの意思表示カードおすすめです!
- 財布に入るようにプラスチックカードサイズで作成
- ラミネートなどの防水加工を推奨
- 「緊急連絡先」と目立つように表記
- 自宅用(ペットの緊急連絡ノート)
- 冷蔵庫:救急隊が確認しやすい場所
- 玄関付近:支援者が入室時に確認できる場所
- ペットの居住スペース付近
- 書面は大きめのフォントで作成
近隣住民への協力依頼
- 依頼する内容
- 緊急時の一時保護
- 救急車が来た際の立ち会い
- ペットの様子の確認
- 鍵の保管(必要な場合)
- 協力者への情報共有
- ペットのケアマニュアル
- 餌の保管場所
- 予備の鍵の保管場所
- 他の緊急連絡先の情報
2. 公的書類の準備
以下は一般的な手続きの参考情報です。実際の対応については、必ず信頼できる弁護士に相談の上、適切な法的アドバイスを受けて進めていただくことをお勧めします。
ペット引き取りの委任状作成
- 基本情報
- 作成日
- 委任者(飼い主)の情報
- 受任者(引き取り手)の情報
- ペットの詳細情報
- 具体的な委任内容
- ペットの引き取り権限
- 医療に関する決定権
- 費用の使用権限
- その他の重要な決定事項
- 添付書類
- ペットの写真
- マイクロチップ登録証
- 予防接種証明書
- 診療記録(必要な場合)
公証役場での認証手続き
- 事前準備
- 公証役場への予約
- 必要書類の確認
- 手数料の確認(2024年2月現在:11,000円程度~)
- 必要書類
- 委任状の原本
- 飼い主の本人確認書類
- 印鑑証明書
- ペットの所有権を証明する書類
- 手続きの流れ
- 公証人との面談
- 内容の確認と説明
- 署名・押印
- 公正証書の作成
- 完成した公正証書の保管
- 原本の安全な保管
- 受任者への写しの交付
- デジタルコピーの保存
定期的な更新と見直し
- 半年に1回程度の情報更新
- 連絡先の変更確認
- ペットの状態変化の記録
- 関係者への最新情報の共有
これらの書類は、ペットが安全に保護されるための重要な備えとなります。特に公的書類の準備については、法的な効力を持たせるために、専門家への相談をお勧めします。
保健所収容を防ぐための事前準備と地域連携
マイクロチップと登録
- 2022年6月1日より犬猫への装着が義務化されました
- マイクロチップにより所有者が明確になり、迷子や災害時にも早期発見・返還が可能になります 引っ越しや電話番号変更時には、必ず登録情報を更新しましょう
地域ネットワークの構築
1. 動物愛護団体との連携
- お住まいの地域の動物愛護団体に事前に相談し、緊急時の対応について話し合っておきましょう
- 可能であれば、緊急時にペットを一時的に預かってくれるボランティア団体のサービスに事前登録しておくと安心です
- 団体によっては、緊急時の保護プログラムを提供している場合もあります
2. 医療機関との関係構築
- かかりつけ獣医師に、緊急時の対応についてあらかじめ相談しておきましょう
- 近隣の24時間対応可能な救急動物病院をリストアップし、連絡先を記録しておきましょう
- ペットの医療記録のコピーを準備し、緊急時にすぐ提示できるようにしておきましょう
行政との連携体制
- お住まいの市区町村の動物愛護担当部署に連絡し、緊急時の対応について確認しておきましょう
- 高齢の飼い主の場合は、地域包括支援センターと連携し、ペットと一緒の支援計画を相談しておくことも重要です
- 一人暮らしの方は、民生委員や自治会との連携も検討しましょう
まとめ
大切なペットのための準備は、決して悲観的な考えではありません。むしろ、「最後まで責任を持って愛するペットの幸せを守る」という、飼い主としての愛情の形です。以下の3点を特に重視して、できるところから準備を始めていきましょう:
- 法的効力のある文書の準備
- 複数の引き取り手の確保
- 関係機関との連携体制の構築